ちはやふる 14巻 感想

ちはやふる14巻が刊行されました。作者いわく目チカラの無い二人が目印の表紙です。(感想はややネタバレを含みます)




全国大会団体戦も佳境/そして決勝へ

団体戦の準決勝もいよいよクライマックスの今巻。各自の勝敗が決まり始め、手に汗握る展開が続きます。そんななか注目なのは駒野。前回でもスポットが当たっていた彼ですが、今回も大活躍を魅せます。その活躍の裏付けもしっかりしていて、こういった脇の固め方は相変わらずこの作者さんは上手いですね。また感情移入させるテクニックとして菫の視点を取り入れているのが見事だと感じました。


無事(?)決勝にコマを進めた瑞沢を待ち受けるのは、前年の大会でもちらりと名前が出ていた名門の富士崎高校。名門とされる強さの裏付けもさることながら、各キャラクターにしっかり個性があるのも良い感じです。非常に強そうな印象が伝わってきます。ところで、真琴の性別はどっちなのでしょう…(初登場時の仕方からして女性だと思うのですが、今巻でよくわからなくなった…)。


また今巻では久々に出番が多かった詩暢。次巻でも活躍(?)しそうなので楽しみです。


悪役の不在が心地よい

ここまで読んできて(ボス的な高校の富士崎が出てきて)ようやく気づき始めてきたのですが、この漫画にはいわゆる『悪い奴』っていうのが居ないのですね(口が悪かったり性格いけずなキャラはいますけれども)。スポーツ系に限らず漫画ではよく『目的のためなら手段を選ばない悪い敵』みたいな当て馬がよくいて、それでいてそいつは昔こんな哀しい過去があって…みたいなの、ぼくははっきりいってあんまり好きではないのです(だってそういうやつって絶対最後には負けますから…展開が見えるような悪役ってつまらないです。ただしそこに到るまでに十分な説得力があったり、展開がよっぽど熱ければ別ですが)。


ところがこの漫画のキャラにはそういったいわば『信条の貴賤』という差がなくて、全員がそれぞれの正しい信条を持って戦っているように思います。だから勝ち負けが最後まで分からない楽しさがありますし、主人公側が勝ってもそうでなくても、どちらも爽やかな試合になるからそれがとても心地よいのですね。(たぶん『ジャイアントキリング』と似たような感じ)


未だにそれなりの数の漫画を読んでいますが、そのなかでも『ちはやふる』を抜群に面白いと感じるその理由の一つがようやく分かってきたような気がします。

伏線に手を抜かない(あるいは丁寧であるということ)

もう一つ今巻で上手いなと思ったのが、この巻の終盤において千早が怪我をしてしまうのですが、そこに到るまでの伏線がしっかり張られているということです(また、その直前のシーンでの千早の札の取り方がとてもカッコいい)。


スポーツ漫画で怪我というのはお約束要素ですが、その後の展開のために何の脈絡もなく突然怪我したりする漫画もわりかし多く、そういうのは結構萎えてしまいます。ところがこの漫画では怪我ひとつでもしっかり理由付けを考えているのが伝わってきます。伏線の技術が優れているというより、これは作者がひたすら丁寧にこの漫画を描いているということなのでしょう。

さいごに

劣勢に加え、さらにアクシデントも起こるという泣きっ面に蜂な展開で始まった決勝。ここから千早と瑞沢メンバーがどう戦っていくのか(勝つのかあるいは負けるのか)楽しみです。個人的には色々な面で不遇な太一に頑張ってほしいところですが…。


次巻は12月発売なんですよね…刊行ペース早いなぁ。