3月のライオン 6巻 感想

3月のライオン、第6巻が刊行されました。感想はネタバレを含みます。


二人の友達を想う主人公の歩み

前半は5巻から引き続き、イジメにあい傷ついているひなちゃんに対し奮闘する零。後半は新人王タイトル戦、二階堂を破った山崎とタイトルをかけぶつかる零の姿が描かれます。ひなちゃんと二階堂、傷つき、傷つけられた二人の友達を想う零の心の動きと行動が見ものの巻といえます。主人公の零が悩みながらも前に進んでいく姿勢は毎度ながら胸を打ちますね。


またこの巻では、ひなちゃんをとりまく大人が暖かくて良いです。傷ついているひなちゃんを支えるあかりさん、ひなちゃんの祖父、また(間接的ですが)適切なアドバイスを零に授ける林田先生。こういった理解のある大人が周りにいることはひなちゃんにとってとても幸運と思いました。


イジメやそれに伴う心理描写が相当リアルなだけに、合間に挟まるギャグやコミカルな演出がいい具合に中和剤の役割を果たしている印象がありますね。


他人のために戦う零

主人公にフォーカスしてみると、今回の零の歩み方には、どことなく危うい一面も感じさせます。というのも、今回の二つの事件(ひなちゃん、二階堂)に関しては、彼自身どちらも当事者ではありません。


友達を想う心は本当に大切なものですし、実際その想いをパワーに変えて新人王のタイトルを得ることができました。とはいえ、彼自身がこれから本当に将棋うちとして大成するためには、『自分のために戦う』ということができなければいけないのではないか…とぼくは考えています。どこまでも他人のために戦い続けた今回の零に対しては、ちょっと不安定な印象をうけました。
(他人のために戦うことがいけない、というのではない事を念のためお断りしておきます)


夢中にならずにはいられない

ともあれ、個人的にはここ数巻の展開の中では最も夢中になった巻でした。タイトル戦で零が怒りに任せて無鉄砲に突っ込もうとする刹那、二階堂のアドバイスをはっと思い出すシーンは鳥肌ものです。こういう、過去の描写と今がリンクする展開は大好きです。


今回の巻は、購入したあと喫茶店で軽くパラパラめくっている内に何時の間にかラストまで読み進んでしまいました。夜じっくり読もうと思っていたのに…おそるべし求心力をもった漫画です。


新人王を獲得した零がこの先どう進んで行くのか目が離せません。