ちはやふる 13巻 感想

※今回からちょっと趣向を変えて、読んだ漫画は各巻ごとに感想を書いて行こうと思います。


ちはやふる 13巻が刊行されました。千早の笑顔が眩しい表紙です。




メンバーの衝突と成長

全国大会の続き、前巻で順当に決勝トーナメントにコマを進めた瑞沢高校。前半は西田君が発する駒野君への想いとそれに伴う衝突、後半は準決勝の、昨年のクイーン挑戦者候補だった逢坂恵夢と千早の戦いがメインに展開されます。


駒野君は、実力としては他のチームメンバーより劣っていると自覚しており、だからこそあえて選手としてではなく、自分の得意分野である対戦相手の『分析』をする裏方に徹しようとします。その態度を西田君は批判します。

ダメなんだよ 自分が前にでなくてもいいって思ったら
気持ちが 矢面に立たなくなった瞬間から
力の現状維持さえ難しくなるんだ <第六十九首/西田>

この言葉は、かるたに限らずあらゆることに言えるでしょう。何事も、常に前線に、戦いの場に身を投じていることで身は鍛えられて行きます。そういう場から一歩引いた場所で力の維持をしようと思っても、なかなかどうしてうまくいかないものです。前線に常にいようとする意識こそが、自分の成長の原動力となるのですから。


そうして一度は駒野君のことを見限る西田君ですが、試合直前に駒野君から聞いたアドバイスにより強敵との戦い方にヒントを得ます。また、分析のため他校の試合をじっくり観察するということがどれほど大変なことかも描写されます(作中では、『一試合をしっかり見ることは、一試合をしっかりやるより体力を使う』と語られます)。

机くんは 矢面に立ってる
自分がかならず瑞沢を日本一にしてみせるって
あのノートが言ってる <第六十九首/千早>

駒野君もまた別の領域の前線にたち、戦っていたのですね。彼の得意分野で全力を出す事で、自分たちのチームを日本一にしようとしていたことが西田君にも、チーム全員にも伝わります。そうしてまた彼らの絆が強くなって行く。こういった一面的でない展開も『ちはやふる』の魅力の一つといえます。

クイーン挑戦者候補との真剣勝負

後半の千早vs恵夢による上級者同士の戦いの描写は、いつもながら圧巻の一言。前巻ではどちらかというとイロモノとの対戦だったため対戦描写は少し物足りなかったですが、今回はクイーン挑戦者候補という実力者との対戦なので、かるた描写は文句無しの面白さです。


流れを引き寄せるのが苦手な千早が、速さと鉄壁さを兼ね備えた恵夢に追いついていく展開は、読む側は思わず熱く滾っていきますね。また激しい戦いのさなか、ひと呼吸おかれる奏ちゃんのシーンは、作者の漫画の旨さを感じさせます。


また試合中に千早が成長していく描写も相変わらず素晴らしいです。成長それ自体が昔からの伏線として活きて来るのが『ちはやふる』の魅力です。少しづつ成長していっているのが、読者も明確にわかるというのが良いです。


次巻が速くも待ち遠しいですね。どう決着がついていくのでしょうか。また、今巻でちらっと顔を見せていた、富士崎高校に所属する謎の少女も今後どう絡んで行くのか楽しみです。